Ⅱ-事実経過・回復進み、そして院内フリー

脳梗塞入院での顛末-Ⅰからの続きです

 11月8日(木)

朝の勤行をやってみる。
声は流石に出せないので、代わりに言語リハビリで練習した大きな口を開けてやってみる。

驚いたことにその日の昼の言語リハビリ時には、ほぼ8割ほどの回復となっていた。
昨日とは違って言葉が通じるのだ。
自分で聞いていても普段と変わらない様なろれつの良さ(…悪さかな?)。
これにはさすがに自分でも驚いた。「今日の今日」の回復結果である。

左顔面も痺(は)れていたが大分感覚も戻ってきた気もする。
ここになって指はかなり動かせる様になった。
腕や、若干だが左脚も上方に上がる様になった。
まだ自分だけではベッドから体を起こせないが、もう少し脚部が上手く動いてくれるといい感じになりそうに思える。

3日振りの頭のシャンプーをして貰う。
入院前は毎日シャワーに入っていたのでとても爽快(そうかい)となる。
爽快すぎて少々ボンヤリする。

眼振のせいで目を開け続けることが辛いのでどうしても昼寝をしてしまう。
その昼寝も辛くもなってきたが、如何(いかん)ともし難い状況だ。

身体リハビリのお陰で、当日夕方には手足がまかりなりにも動く様になった。ここに来てある意味、漸(ようや)く現在の自分の状況・状態が客観的に見えて来た。

11月9日(金)

沈黙口開け」勤行のお陰で言葉がすっかり元に戻った。
驚く様な事実だけど、何故か「当然」だと感じている。
そして作業療法士の判断で今日にて早くも言語リハビリは終了となる。
更には身体リハビリのお陰もあって左半身が大分動かせられる。
何と車椅子を降りて点滴棒片手に「ゆっくり歩行」が可能となる。

入院から計3日ほどで身体・言語等の回復が出来た訳だ。
後述する担当医の話ではないが、「奇跡」と呼べる出来事が起きた様だ。
麻痺もそれなりに解消されてきた。
まだまだ左半身の所々に「鉄板」が入っている感じではあるが、完全麻痺からの回復ならこの状態は良しとすべきだろう。

これら(点滴棒歩行等)を見て、入院当初の自分の状況(前述)を見聞きしていた看護師の何人から「〇〇さん、歩いている!?」と言う声が聞こえてくる。
そんな言葉を掛けられるとやはり嬉しい。

口開け沈黙勤行、身体リハビリ、そして自己リハビリ・筋トレ等の訓練のお陰で正直自分でも驚くほどの回復を見せている。
眼球の自分流のリハビリが上手く機能したせいか、眼振も治(おさ)まって普通通り視力が戻ってきた。
兎に角読書が可能になったことはとても嬉しい。

もっと嬉しいことは、おかゆから通常の食事となったこと。
旨いものを食えるのは当に御本尊からの最高の功徳である…(‘-‘*)

11月10日(土)

点滴棒付き歩行を卒業。
理学療法士さんから「杖使用」の許可が下りて、病室内だけだが「室内フリー」となる。
今まで何をするにもナースコールに頼っていたが、一つの山を確実に越えた思いだ。
漠然と考えていたがナースコールを卒業することも一つの目標であった。

食事が美味しい♪
元々この病院の味付けは自分に合っているが、更に美味しく感じる。

リハビリ訓練中にも療法士数人から声を掛けられる。
確かに、入院時の完全半身不随からたった6日後に点滴棒片手ではあるものの普通に歩行しているのを見るのは、誰しも驚きの事実であろう。(まあ、自分が一番驚いている訳だし…)

11月11日(日)

先週の土曜日に運び込まれたので今日で丁度一週間目の記念すべき日。

今日一日の間で杖使用の歩行はほとんど行っていないことに気付く。
必要はなくなった様だ。
点滴等も不要になって撤去。
すっきりした毎日だ。

左腕や脚の麻痺はまだ残っている。
健常者時の様な歩行は当然難しいものの(ビッコに近い歩行)、それでも何も頼らずに自分だけで歩けていることは嬉しい。
自分一人でシャワーを浴びる。
「I’m free!!」という気持ち。

リハビリ体操と筋トレ練習。
自己トレは次の日(早い時はその日の午後)に効果が出る。
やればやるだけ通常歩行に近付いている。
結果の見える練習はやはりとても楽しい。

杖が無いと少々の不安もあるが、病室内だけなら特に気にならなくなっている。

11月12日(月)

身体リハビリ進む。
若干の左脚の「浮き」(経験者は分かると思うが)や「筋力不足」はあるものの、ほぼ全くと言っていいほど歩行に支障はなくなってきた。
左手もかなり動かせるし指の感覚も戻りつつある。
これは生活している内に更に回復する場合もあるとの話である。
リハビリ中に作業療法士の何人かに「〇〇さん、歩いている!」と声を掛けられる。
その声に笑顔で答えられる事がまた嬉しい。

昼食に天ぷらそばが出た。
リハビリの結果よりも更に更に嬉しい出来事だ。

11月13日(火)

更に手・脚の運動回復が出てきた。
リハビリの作業療法士さんに「こんなに回復の早い人は今まで見たことがない」という話をされる。

11月14日(水)

担当医の今回の入院・状態説明が今日予定されていたが、緊急に手術が入ってキャンセル。
まだ病室から出る許可が出ていないのでベッド上や窓側で自己リハを行う。
筋トレはやはり左脚がむくれてしまう。まあ当然だ。
歩行可能時から(前述)5日後程度の今日の話である…。

11月15日(木)

身体リハビリ。
筋力アップのリハもあるので結構な汗をかく。(その夜のシャワーを夢に頑張っている訳だが…)
自己リハも毎日同時並行でやっているせいもあって、回復が非常に早い。

ベッド上や窓際で病室内を自由に歩いたり筋トレをしている。
脚の状態は自分でもまだ若干の違和感を感じる。
歩行動作中のどこかで「脱力」が起こっていて、まともに歩いている様に自分では感じられない。
やはり脳の中で左半身の動きが一旦完全にリセットされた訳だから、新たな(神経)回復となると時間もかかる様だ。

脳梗塞患者の辛さが痛いほど理解出来る。それと同時に勿論の事御本尊の凄さも。
また、理学療法、作業療法の大事さも痛感する。
健常者には全く不要な療養作業だが、脳梗塞で身体麻痺や長期入院で身体動作不能となった人々に対しての彼等の貢献は、ある意味絶対必要不可欠な存在である。

しかし悲しいことにこの事実は過去の自分も含めてだが、健常者にはほぼ全く理解不能の話である…。
ある意味「信仰体験」を完全否定する人々の感覚に似ている様な気もしてくる。

11月16日(金)

14日にキャンセルされた担当ドクターの説明会が行われる。(前述の記載の繰り返し)
妻と娘そして自分の3人が参加する。
担当医の話は以下の通り。

  • 病名は「右延髄(えんずい)梗塞(こうそく)」。
  • 身体にとっては非常に危険な部位が破損したと言う事である。つまり一歩間違えるとそのまま回復不能となる部位だったらしい。
  • 上述説明の具体的な話は、(MRIの画像を見る限りでは)延髄から脳に行く二つの太い血管の右側が、脳への入り口部分で無くなっている(詰まって切れている)。要するに脳に血液が行かなくなっていてその部分が死んでいるらしい。で、左側の体全てが不随となったものだ。(脳の左と右は、体幹のそれぞれ右と左に対応している)
  • 撮影時点での医師の判断は、最悪この状態のまま(左半身不随のまま)回復は全く見込めない、と言う。
  • 入院当初のMRI画像判断では、左半身麻痺は回復不能だったものの、しかし現在のここまでの回復状況は(数日で歩行し、言語も回復。そしてほぼ通常の生活可能な状態)、医学的には「奇跡」と云うほかない。
  • 唯、気を付けるべきは、今後の食生活はしっかり良い方向に維持していくべき。
  • 上述の血管の切れた部分は(MRIの解像度の関係もあるが)太い血管の代わりに(画像では見えない)毛細血管が主血管の代替を努めているかも知れない。(と言う話をこちらからすると、担当医は否定はしなかった)

この話と脳の画像を見ながらも、自分自身は全くショックを受けなかった。
今までの実際の回復状況も感じているものの、非常に冷静に彼の話を聞いていた。
更にリハビリをやっていかねばと言う思いが湧いてきた。

上述の通り担当医は、現在の回復状況は「奇跡です」という言葉を実際に使用した。
様々な脳梗塞の症例を見ているはずのプロの医者のその言葉である。
医者としてそんな言葉を安易に使用できるわけはないにも関わらずに「奇跡」の言い方には、やはり重量級の重みを感じる。

聞いていた3人ともその言葉を聞きながらビックリすると共に嬉しくもなったという、そんな説明会であった。

歩行回復」の目的は一応達成された。
さてこれからどうすべきか…。と言うのがその時の感覚であった。
しかし後述する「ある事」が起きて、更に新たな目標が決まることになる。
次の取り敢えずの目標は、現在のICU(SCU)から一般病棟に移る事、そして最終の目標である「退院」と言う目に見えるものが次に控えてもいる。

当「病棟フロアフリー」の許可がリハビリ先生より出たので、廊下歩行の自己リハ行う。
廊下3周すると結構疲れる。1周120mなので大体350m程。

11月17日(土)

リハビリ目標は「仕事完全復帰用」に変更される。
左側の、まだ完全に復活していない筋肉系の弱い部位を自分で確認する。
弱い部位を中心に強化・柔軟等を行う。

N課長がお見舞いに来た。

11月18日(日)

妻が本幹同時中継参加。(録画ではなく本当の同時中継)
リハビリは「通勤(歩行・地下鉄)と仕事復帰(筋肉強化・持続の筋肉)」の為の練習になったのでかなりハード。
自己リハもそれなりにハードにして行く。
フロア歩行の廊下3~5周(300~600m)。
最終の周回にはやはり太ももが突っ張ってくる。
左脚の筋肉や神経が歩き方を忘れているので、もう一度脳と筋肉に遣り方を教えていると言う感じだ。

11月19日(日)

院内全域フリー」となる。
早速に階段を練習。
降(くだ)りに脚部の弱い場所か顕わになってくる。
その部分の強化は結構大変だ。

…Ⅲ-事実経過・後遺症ゼロの体を目標、そして退院に続きます


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Author: 乾河原

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